総入れ歯 義歯床のいろいろ
足立区・西新井の歯医者・ヒロ歯科クリニックの院長です。
今日は、総入れ歯の義歯床の種類についてお話します。義歯床とは総入れ歯の本体で、人工の歯を支え口の粘膜と密着して総入れ歯を安定させる部分です。総入れ歯では特に上の入れ歯については義歯床の種類によって違いが感じられます。
①プラスティック(レジン) 健康保険適用(一部自費治療)
レジンと言うプラスティックでできています。一般的に健康保険で作るタイプはこれですが、なかには保険適用外のレジンもあります。
レジンの特徴としては割れないように比較的厚く作られるため、邪魔な感じがするときもあります。また、厚みのため、スープなどを飲んだときに熱さを遅れて感じます。はじめて総入れ歯を入れた方は、あとでおとずれる熱さにびっくりしてしまうことがあるので気をつけなければなりません。ただ、邪魔な感じなどの感覚は患者さんによってだいぶ異なります。
色は一般的には歯ぐきと同じピンク色です。実際はピンク色と言ってもレジンの色は7~8種類くらい細かく色が設定されています。ただし、実際は1~3種類程度で十分適応できます。ヒロ歯科クリニックでは一番きれいと院長が感じているライブピンクという色を通常使用しています。
②金属 自費治療
金属で作る入れ歯の最大の利点は、薄く仕上がり丈夫で壊れにくいことです。プラスティックと違って入れ歯がたわまないので、あご(顎堤)に負担がかからず痛めにくくなります。また金属でできているので、熱が伝わりやすく、熱い食べ物、冷たい食べ物が簡単に判別できます。ただし保険は適用されません。
金属の材料(素材)は大きく分けて3つあります。コバルトクロム、チタン、そして白金加金です。コバルトクロムやチタンは、作り方としては特殊技工という分類に入るため少し複雑になっています。コバルトクロム床はいわゆる保険外の入れ歯(自費診療の入れ歯)の代表的なものです。薄く加工でき、熱のとおりがよいです。部分入れ歯(部分床義歯)の装置であるクラスプ(歯にかけるバネ)はコバルトクロムで作ることが多いので、様々な症例に使用が可能なのが特徴です。チタン床は今までは加工が難しく作るのが困難とされてきましたが近年は加工法が改良され多く臨床応用されるようになって来ました。チタンという金属は金属アレルギーがほとんどない生体親和性(体とのなじみがよい)金属の代表で、インプラントの材料もチタンを用いています。また、非常に軽いのが特徴です。軽い素材なのでゴルフのドライバーのヘッドなどに使われています。プラスティック床やコバルトクロム床からチタン床に変更された方は、驚くほど軽量なため入れていても疲れないと評判です。白金加金床は詰め物などにつかうプラチナゴールドと同じです。しっとりとするフィット感はアクセサリーなどにも使われていることから折り紙つきです。しかし、総入れ歯に用いる場合、他の金属床と比べてかなり重いのが欠点です。しかも他の金属床と比べかなり高価なのも欠点といえるでしょう。
③シリコン(シリコン裏装) 自費治療(一部健康保険適用)
シリコンで裏打ちする入れ歯は、歯科医院でシリコンを入れ歯に敷くものと型を取り技工所で精密に加工して敷くものの2タイプに分けられます。
シリコンの種類によって自費治療と保険適用のものに分けられます。いずれもやわらかく密着しやすいのが利点です。欠点は汚れがしみこみやすく長くもたない点です。
一般的には歯がないのに咬合力が強く(強くかみ締めるのがくせで)顎堤を痛めやすいかた、顎堤の粘膜が非常に薄い方、顎堤の骨が鋭くとがっているかたなどに適応されます。
患者さんの多くは「入れ歯が痛い、だからシリコン裏装の入れ歯がよいのではないか」と考えがちです。でもシリコンは長持ちしませんし、使用法を誤ると症状を悪化させてしまう可能性もあるので、そうしても痛みが出てしまうケースに限り使用すべきと考えています。ヒロ歯科クリニックではそのような理由で最初からシリコンを使用することはまずありません。どうしてもとご希望の方はご相談ください。